1.はじめに Oracle NetSuiteは、会計・調達・在庫・販売・CRM・生産・プロジェクト管理といった業務を、ひとつのクラウド上で一元管理できる統合型ERPです。 部門ごとに分散していたデータをリアルタイムに集約できるため、意思決定のスピードと精度が大きく向上します。これは従来のオンプレミス型システムにはない、クラウドERPならではの強みです。 またOracle NetSuiteでは、例年「Release 1」(春)と「Release 2」(秋)の年2回、大型機能拡張を行います。 最新の「2024.2〜2025 Release 1」では、AIによる請求書の自動読取や見積書の自動生成などが追加・強化されました。これにより、日常業務のさらなる効率化・自動化が実現されています。 2.NetSuiteの機能一覧 a. 会計・財務管理 主な機能 仕訳・元帳・決算の自動化 請求・売掛/支払・買掛の一元管理 AP Automation/AI Bill Capture(請求書読取の高度化) 予算策定・多通貨対応レポート ポイント PL/BSをリアルタイムで可視化できるため、月次・四半期決算を待たずに資金繰りやKPIの乖離を即時に補正でき、意思決定のスピードと精度が向上します。 さらに、AIによる高精度な伝票読取が仕訳起票を自動化して工数を大幅に削減し、承認ワークフローの強化によって内部統制と監査対応も同時にレベルアップします。 b. 購買・調達管理 主な機能 事前交渉済み契約と発注書の自動ひも付け SuiteProcurement(パンチアウト購買・承認ワークフロー) 仕入先ポータルで納期・支払状況を共有 ベンダー評価/支出分析ダッシュボード ポイント 調達と購買の進捗を一つのダッシュボードで俯瞰できるため、価格・納期・品質の最適バランスを即時に判断可能です。 標準化されたワークフローにより、属人的なメール稟議を排除して意思決定を迅速化し、購買リードタイムを大幅に短縮します。 c. 在庫・倉庫管理 主な機能 マルチロケーション在庫のリアルタイム可視化 WMS連携によるバーコード入出庫・検品 マトリクスアイテム/シリアル・ロット追跡 棚番(BIN)管理と自動補充アラート ポイント AIが売れ行きを予測して最適な在庫数を自動で提案するため、余計な在庫を抱えずに欠品も防げます。倉庫ではハンディ端末でバーコードを読むだけで作業が完結し、書類は一切不要です。 さらに棚卸で数量が合わない場合も、どの商品がいつ・どこでずれたかを即座に追跡できるため、原因究明がスムーズに進みます。 d. 販売管理 主な機能 見積〜受注〜売上を一気通貫で処理 CPQ AI Assistantで複雑な価格設定を自動化 価格表・キャンペーン・契約更新の管理 受注残・出荷状況を顧客ポータルで共有 ポイント フロントの販売データとバックオフィスの在庫・会計データを単一のデータベースで一元管理することで、受注と同時に在庫が自動で引当され、確定売上へシームレスに転記されます。 このプロセス統合により誤出荷や二重計上のリスクを根本から排除し、資金回収を大幅に前倒しできる体制を実現します。 e. CRM/SFA 主な機能 リード〜案件〜アップセルまでの顧客履歴を統合 予実をリアルタイムに示す営業ダッシュボード モバイルアプリで商談メモを即時共有 マーケティングオートメーション連携 ポイント 営業・サポート・ECの各チャネルで得られる顧客情報を1レコードに集約することで、部門をまたいだ顧客LTVの可視化・分析がシームレスに行えます。 さらに、SFAデータが会計システムとリアルタイムに連動しているため、売上予測の精度が大幅に向上し、迅速かつ確度の高い経営判断を支援します。 f. 生産管理 主な機能 BOM・ルーティング・作業指示を一元化 ガントチャート式の負荷シミュレーション 実績収集による標準 vs. 実際原価差異の算出 品質検査・不良分析 ポイント 製造現場で入力された実績データは即時に会計原価へ反映されるため、計画と実績の乖離をその場で捉え、速やかに是正措置を講じられます。 さらに、拠点が複数に分散していても、BOM・ルーティングを単一マスターで運用できるため、生産プロセスと原価統制をグローバルに一元管理できます。 g. プロジェクト管理 主な機能 工数・経費・売上をプロジェクトコードで統合 ガントチャート/リソース最適化アルゴリズム 予算 vs. 実績レポート、出来高課金・マイルストーン請求 テンプレート複製で類似案件を高速立ち上げ ポイント タスクレベルで収益性をリアルタイムに可視化できるため、赤字の兆候を早期に察知して即座に是正策を打ち出せます。 さらに、サービス業やSIerで求められるERPとPSA(プロフェッショナルサービス自動化)の機能を単一ライセンスで統合できるため、システム投資を抑えながらプロジェクト管理と収益管理の精度を同時に高められる点も大きな強みです。 まとめ Oracle NetSuiteは、会計・調達・在庫・販売・CRM/SFA・生産・プロジェクト管理を単一のクラウド基盤で連携させることで、従来バラバラだった業務データをリアルタイムに統合し、意思決定のスピードと精度を劇的に高めます。 年2回の大型アップデートではAI機能が継続的に強化され、請求書読取や見積生成、需要予測など日常業務の自動化レベルが着実に向上。これにより、経理部門は伝票起票の手間を減らし、購買部門はリードタイムを短縮し、倉庫は欠品・過剰在庫を抑制し、営業はより正確な売上予測を立てられるようになります。 さらに、BOMやルーティング、工数実績が会計原価と即時にひも付くため、製造・プロジェクトの原価乖離をその場で是正でき、グローバルで分散した拠点をまたいだマスター統制も容易です。サービス業やSIerの場合でも、ERPとPSAを一体で運用できるため、システム投資を最小化しながらタスク単位の収益管理とリソース最適化を実現します。 総じてNetSuiteは、企業規模や業種を問わず“全社データの単一ソース化”と“プロセス自動化”を同時に進めることで、経営と現場の両面に即効性のあるインパクトをもたらすクラウドERPの決定版と言えるでしょう。