1. はじめに:ERP初心者にとって「用語」が壁になる NetSuiteは、クラウド型の統合業務システム(ERP)として、グローバルに多くの企業で導入されています。しかし、初めて触れる人にとっては「フォーム?トランザクション?保存検索?」と、聞きなれない用語がハードルになりがちです。そこで本記事では、NetSuiteを使ううえで必ず出会うキーワードを厳選し、それぞれの意味と活用シーンを解説します。用語の理解は、業務全体の流れをつかむ第一歩。ERPの世界を「単語」から覗いてみましょう。 2. キーワードで読み解くNetSuiteの基本構造 a. マスタ(Master) マスタとは、業務のベースとなる静的なデータです。顧客や仕入先、在庫アイテムなどが代表例で、これらはNetSuite上で”レコード”として管理されます。トランザクションの起点となるため、正確な登録が業務の安定運用を支えます。 b. レコード(Record) NetSuiteにおける情報の最小単位であり、1つの顧客、1つの取引、1つのアイテムなどが「1レコード」として存在します。Excelで言えば「1行」に相当します。 c. トランザクション(Transaction) 受注、出荷、請求、支払など、日々の業務行動を記録するのがトランザクションです。マスタと連動して、財務、販売、在庫管理のすべてに関わります。トランザクションレコードは、会計仕訳にも自動連携されます。 d. フォーム(Form) NetSuiteでデータを入力・確認するための画面インターフェース。標準フォームのほかに、ユーザー部門や業務内容に応じてカスタムフォームを作成し、より使いやすく調整することが可能です。 e. フィールド(Field) フォームの中にある個々の入力欄をフィールドと呼びます。例:取引日、金額、数量など。標準フィールドに加えて、カスタムフィールドも追加でき、自社業務に合わせた柔軟な設計が可能です。 f. ヘッダー(Header)とライン(Line) 伝票の構造として、全体に関わる情報を持つ「ヘッダー」と、商品明細など個別のデータを持つ「ライン」に分かれます。例えば、Sales Order(受注伝票)では、ヘッダーに取引先や取引日、ラインに商品や数量、単価が記載されます。 g. 顧客・仕入先(Customer / Vendor) 物やサービスを売る取引先である顧客と、物やサービスを買う取引先である仕入先はそれぞれ別のマスタレコードとして管理されます。営業活動や購買処理の基盤となるため、情報の精度が求められます。 h. 在庫アイテム(Inventory Item) 倉庫に保管される物理的な商品。入出庫管理、在庫評価、原価計算などに使われ、正確な在庫情報は企業経営に直結します。 i. アセンブリアイテム(Assembly Item) 複数の在庫アイテムを組み合わせて構成された製品。BOM(部品表)情報に基づいて構成され、製造業などで利用されます。 j. 手数料アイテム(Other Charge Item) 梱包費や配送料など、数量を持たない金額ベースの項目に使われます。サービス料金などの処理にも活用され、会計処理との連携も可能です。 k. 保存検索(Saved Search) NetSuiteの代表的な機能の一つ。あらゆるレコードに対し、条件設定・並べ替え・集計・表示項目の選定が可能。SQLライクなインターフェースで、業務部門が自らデータを抽出・可視化できます。 l. ロール(Role) ユーザーに付与する操作権限のテンプレート。営業担当や経理担当、管理者などに応じて、表示可能なメニュー・レコード・ボタンを制御できます。 m. 部門(Department)・場所(Location) 部門は経理的な区切り、場所は在庫や活動拠点としての区切りを意味します。部門別損益管理や拠点別在庫管理の単位として使われます。 n. カスタムワークフロー(Custom Workflow) SuiteFlowというノーコード機能により、処理の自動化や承認フローが設定可能。例:Sales Order登録後に自動でメール通知を送る、金額条件に応じた上長承認を設定する、など。 3. 用語がつながると、業務が見えてくる 用語だけでなく、それらがどう連動するかを知ることで、NetSuiteの業務全体像が見えてきます。 【図解】NetSuiteにおける「受注から入金まで」の業務フロー 各ステップは保存検索などで進捗管理が可能。ダッシュボード上で一元的に確認・分析ができます。 4. おわりに:単語から入るERP理解 NetSuiteの導入や運用において、最初のハードルは「専門用語の理解」にあります。しかし、一つひとつのキーワードが業務とどう結びついているのかが見えてくると、ERPは決して難しいものではありません。 今後もOracle Consult Mediaでは、ERP初心者にやさしい形でNetSuiteの知識を発信していきます。